僕は社会を知らなかった。

 子供の頃から父親が毎日どんな仕事をしているのか疑問に思っていた。自分から聞くこともしなかったので、会社の名前からなんとなくイメージするしかなかった。もしかしたら、何気ない会話の中でヒントになるようなことは聞いていたかもしれないが、ほとんどわからない。毎日朝早く(大体7時過ぎだろうか)から夜遅く(平均すると22時頃だろうか)まで何をしているのか謎だった。父親を含む大人達は毎日どんな事をしているんだろうかと子供ながらにとても興味があった。興味はあったが自分から積極的に知ろうとは思わなかった。というか知る術がわからなかった。そんなことよりも学校生活や遊びに精一杯だったのだろう。

 そして、いつの間にか僕は大人になり社会人として会社で働くようになっていた。ようやく子供の頃からの謎だった仕事というものがわかるようになった。わかったのは、仕事というのは思っていたほど大したことではないということだった。子供の頃は仕事をしている大人達はなんだかよくわからないけど "偉い” ものなんだと思っていた。大変と言えば大変なんだけどそこまでではない。お金を稼ぐということは大変なことだと思っていた。でも、現実には生きる上で十分なお金を稼ぐだけだったらそこまで大変な思いもしなくてもいい。

 書いていて仕事に対する考え方が間違っていたことに気づいた。上記のような(仕事は大変なものでそれを毎日やっている大人は偉い的な)考えの前提にあるのは、仕事=大変なことだった。いやいや、ちゃうちゃう。自分がやりたい事をやればいいのだ。それはもちろん自己満で終わったらお金は得られない。自己満は趣味でいい。お金を得るには必然的に社会との関わりを持たなければならない。だから、社会に対して自分が本当にやりたい事をやればいい。それが仕事だ。